体を動かすためには、神経からのメッセージによって骨格筋が収縮する必要があります。この過程は次のように行われます。
(1)中枢からの骨格筋収縮の指令(電気的信号)が、神経を伝わって先端(神経終末)までやってきます。
(2)信号(活動電位)が届くと、神経終末にあるカルシウムチャネルが開き、カルシウムが流入します。
(3)神経終末内のカルシウム濃度が上がると、シナプス小胞と呼ばれる袋が神経終末の膜と融合し、小胞の中に入っていた神経伝達物質(アセチルコリン)が放出されます。
(4)アセチルコリンは、筋線維の細胞膜上にあるアセチルコリン受容体と結合します。これによって、筋肉内で化学反応が始まり、骨格筋が収縮します。
LEMS患者さんの約 90%が、神経終末にあるP/Q 型電位依存性カルシウムチャネル(P/Q 型VGCC))に対する病原性自己抗体を有しています1,2)。
私たちの体には、細菌やウイルスなどの微生物や異物(抗原)が体の中に侵入してくると、これらに抵抗する物質(抗体)をつくってこれらを排除する働き(免疫)があり、通常、抗体は自分の体を攻撃することはありません。しかし、何らかの原因で免疫機構に異常が生じると、自分の細胞成分に対して抗体をつくってしまい、自分の体を攻撃することがあります。この抗体を「自己抗体」といいます。
LEMS患者さんではP/Q 型VGCCに対する自己抗体により、同チャネルの機能障害または減少が生じ、神経終末からのアセチルコリンの放出が阻害されます。その結果、神経から筋線維への伝達が障害され、筋力が低下するのです。
LEMSにおける神経と筋線維の接合部
- Motomura M, et al.: JNNP 1995; 58: 85-87.
- Lennon VA, et al.: N Engl J Med 1995; 332: 1467-1474.